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最高裁判所第二小法廷 平成6年(あ)500号 判決 1994年7月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人藤井成俊、同鈴木典行、同成田龍一の上告趣意のうち、公職選挙法二五三条の二に関して違憲をいう点は、右規定及びこれを本件に適用することが憲法一四条、三七条二項に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和三五年(あ)第六七二号同三六年六月二八日大法廷判決・刑集一五巻六号一〇一五頁)に徴して明らかであって、所論は理由がない。また、本件公訴提起手続について違憲をいう点は、検察官のした被告人に対する本件公訴の提起が差別的な意図に基づくものではなく、訴追裁量を逸脱したものとは認められないとした原判断は正当であるから、所論は前提を欠き、判例違反をいう点は、本件と事案を異にする各判例を引用するものであって、適切ではなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、原審が、公職選挙法(平成六年法律第二号による改正前のもの)二三五条一項にいう「経歴」とは、公職の候補者又は候補者になろうとする者が過去に経験したことで、選挙人の公正な判断に影響を及ぼすおそれのあるものをいうと解した上、被告人が、中学生当時公費の留学生に選ばれ、スイスで半年間ボランティアの勉強をした旨虚偽の演説をした行為は、福祉政策の重視を訴える被告人の実績等を誤って強く印象付け、選挙人の公正な判断に影響を及ぼすおそれがあるものであるから、同条項所定の「経歴」に関し虚偽の事項を公にしたものに該当するとした判断は、正当である。

よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官根岸重治 裁判官中島敏次郎 裁判官木崎良平 裁判官大西勝也)

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